2009-01-01から1年間の記事一覧

内閣支持率を調べるのは「よろん調査」か「せろん調査」か

(第156号、通巻176号) 政権発足100日を節目に鳩山内閣の支持率について、マスコミ各社の世論調査の結果が相次いで発表された。いずれも内閣支持率の急降下を示しているが、このブログで今回取り上げるのは、調査結果ではなく、「世論調査」の「世論」とい…

年賀状の「頌春」はなんと読むか、意味は?

(第155号、通巻175号) 毎年、クリスマスの前後になると年賀状書きに追われる。来年こそ余裕をもって早めに書き始めよう、と思いながら幾星霜、怠惰は一向に直らない。今年も今ごろになってようやく「謹賀新年」を書き出したところだ。 「謹賀新年」は、い…

「幕間」の本来の読み方

(第154号、通巻174号) 来年4月の公演を最後に建て替え工事が始まる東京・東銀座の歌舞伎座。「さよなら公演」と銘打って今年初めから名作の出し物が続いているが、横浜から貸し切りバスで行く格好の観劇ツアーがあったので、話のタネに、と参加してみた。…

「派遣切り」が新語・流行語賞とは

(第153号、通巻173号) 今年の世相を反映した言葉を選ぶ恒例の「新語・流行語大賞」で、大賞候補のトップテンに「派遣切り」が選ばれた。働く者を一方的に切り捨てる意味のこんなひどい言葉が新語・流行語賞とはあまりにも悲しい。 「〜切り」という言葉は…

「ワンストップ・サービス」は止まらない

(第152号、通巻172号) 年末を前に失業者の就職と生活支援を一括して世話する「ワンストップ・サービス」の試行が11月30日から全国77カ所のハローワークで始まった。「ワンストップ」とは一般にはあまり聞き慣れない言葉だが、実はここ7、8年さまざまな分…

袖振り合うも「多生の縁」か「他生の縁」か

(第151号、通巻171号) 「天橋立」「姫路城」方面への小旅行中に何人かの方と顔見知りになった。いわゆる「袖振り合うも多生の縁」だ。三省堂『新明解国語辞典』第6版の語釈を借りれば、「見も知らぬ旅人同士が同じ木の下に一時いこい宿るのも、決して偶然…

白鷺城と「姥が石」

(第150号、通巻170号) 前回の小旅行の続き。「天橋立」を見終えた後、バスで夜「姫路城」へ。ライトアップされた天守閣が闇の中に白くくっきり浮かび上がって見えた。「白鷺城」(「しらさぎじょう」または「はくろじょう」)の異名《注1》に似つかわしい…

白砂青松の「天橋立」と神話

(第149号、通巻169号) 神秘的でロマンティックな文字と音の響きを持つ「天橋立(あまのはしだて)」。今年10月から5年計画で改修保存工事が始まった「姫路城」。別名白鷺城。片や日本三景の一つに挙げられる天下の景勝地、片や世界文化遺産の日本登録第1…

世界初の「青いバラ」と花言葉

(第148号、通巻168号) バラ(薔薇)といえば、ほとんどの人は真紅の花を思い浮かべるだろう。実際には改良が進んで色も赤のほかピンク、黄、白と多彩にふえたが、「青いバラ」だけはできなかった。このことから、英語の“a blue rose”は「不可能」を意味す…

「好々爺」と「老婆心」

(第147号、通巻167号) 正と悪。明と暗。右と左。太陽と月。老若男女……。さまざまな対義語がある。今回のブログの標題の中の文字でいえば「爺」と「婆」だ。 プロ野球・パリーグのクライマックス・シリーズが終わった翌日の25日、ある民放テレビのワイドシ…

「10.21」国際反戦デーと“還暦”の「わだつみのこえ」 

(第146号、通巻166号) きょうは「10月21日」。この日付を「10.21」と表記するか「ジ(ュ)ッテン ニーイチ」と発音すると、特別な感慨を抱く人も少なくないにちがいない。「国際反戦デー」。1966(昭和41)年に当時の日本労働組合総評議会(総評)がベトナ…

「八ツ場ダム」の「ツ」はなぜ「ん」と読むのか

(第145号、通巻165号) 先日、民放テレビの旅番組の英国編を観ていたら、有名なオックスフォード大学の校名の由来について説明している場面があった。よく知られた話ではあるが、大学の所在地のオックスフォードはoxとfordの合成語で、「牛」(ox)が渡れる…

「時を分かたず」は「いつも」使わない

(第144号、通巻164号) この前から取り上げている文化庁の「国語に関する世論調査」平成20年度版では「時を分かたず」も意表を突かれた設問の一つだった。「事件の後には、時を分かたず、厳重な警備が行われた」という例文を添え、a)すぐに b)いつも、の…

「采配」は「振るう」のではなく「振る」

(第143号、通巻163号) スポーツの監督などの指揮ぶりを表現する時、「采配を振るう」とよく使う。この間の日曜夜のNHKスペシャル「ONの時代 第2回 スーパーヒーローの終わりなき闘い」でもナレーターが長嶋茂雄の監督時代を振り返る場面で「セオリーを無…

「初老」も「世につれ……」

(第142号、通巻162号) 第一線の職場をリタイアした頃から「老」という字に敏感になったような気がする。 「敬老の日」と言うと9月15日をつい連想してしまうが、2003年から9月の第3月曜に移されたので、今年は21日が敬老の日だった。その日に合わせて総…

「破天荒」=「未曽有」とは

(第141号、通巻161号) 並外れた、豪快な、破れかぶれの、荒っぽい、奔放な……。「破天荒な人間」というと、こんなイメージを抱く人が多いのではあるまいか。「破」「天」「荒」。一文字、一文字の字面につられるせいにちがいない。現に、私がそうだった。と…

「藍より青し」

(第140号、通巻160号) 「トラッドジャパン」。NHK教育テレビでこの春から始まった英語講座だ。従来の会話主体の語学番組とは違い、日本の伝統文化について英語で学ぶというコンセプトがユニークだ。先月末の番組では「藍染め」が取り上げられた。日本人が…

「先生」か「タダの人」か

(第139号、通巻159号) 総選挙は新聞各紙の世論調査の予想通り、自民党が壊滅的な惨敗を喫し、民主党の歴史的な圧勝に終わった。敗れた自民党の前議員の多くは「逆風が予想をはるかに超えるほど強かった」と嘆いていたが、風というより、地殻変動と言うべき…

「40そこそこ」と「40がらみ」と「アラフォー」の違い? 

(第138号、通巻158号) 仕事を通じて懇意にしているコンピューター会社勤務の知人が還暦だというので、一献傾ける場をもった。その酒席で、還暦前後の男性を最近は「アラ還」と呼ぶことが話題になった。30歳前後の女性を「アラサー」(around 30)、40歳前…

「異和感」に「違和感」を覚える

(第137号、通巻157号) 5年前に出た文藝春秋の特別版『美しい日本語』(9月臨時増刊号)を読み返していたら、西義之・元東大教授のエッセイに次のような一節があるのに気付き意外に感じた。 「私はとくに天邪鬼(あまのじゃく)ではないつもりだが、『美…

気になる「目線」と「視線」

(第136号、通巻156号) 総選挙の公示は来週の18日だが、事実上の選挙戦はとうに始まっている。各党はマニフェストを発表し、各立候補予定者もそれを基にした公約を演説会で、街頭で、声高に叫んでいる。それらの文書、演説の中にはたいてい「国民の目線に立…

「お手数」の読み方は「おてすう」か「おてかず」か 

(第135号、通巻155号) 手間をかける、という。ほぼ同じ意味で「手数をかける」という言い回しがある。例えば、友人が自分のために労力・時間をかけてくれた時に「お手数をかけてすみません」と感謝の意を表したり、相手に手間をとらせるようなことを依頼す…

「三日とろろ」と数字表記

(第134号、通巻154号) 「三日、とろろ美味しゅうございました」→「三日とろろ美味しゅうございました」。東京五輪の銅メダリスト・円谷幸吉選手の遺書の一部を紹介した前回のブログで、引用個所の間違いを矢印のように訂正《注》したところ、今度は「三日…

「形容詞+です」を言い換える工夫 

(第133号、通巻153号) 前回の「形容詞+です」は出張先のホテルで書いたので電子辞書など2、3の参考文献にしか当たることができなかったが、横浜の自宅に戻ってから改めて調べてみると、「形容詞+です」に対する認識は辞書によって相当大きな違いがある…

「形容詞+です」表現の是非 

(第132号、通巻152号) 横浜から山形へ。今回のブログは出張先の山形からの発信である。山形新幹線の車中で、数日前に刊行されたばかりの別宮貞徳著『裏返し文章講座 翻訳から考える日本語の品格』(ちくま学芸文庫)を読んできたところなので、その感想の…

「火蓋は切って」も「落とされ」ない?! 

(第131号、通巻151号) 日本の政界はここ1、2年、衆議院は解散するのか、総選挙はいつになるのか、の問題に明け暮れしてきた感がある。政治状況によっては、とうに「総選挙の火蓋(ひぶた)が切って落とされた」かもしれない――という文のカギ括弧の中の表…

太宰治の「月見草」、竹久夢二の「宵待草」

(第130号、通巻150号) 今年は太宰治の生誕100年にあたるというので、太宰治関連の出版や映画、テレビ番組などの企画が相次いでいる。太宰治といえば、『斜陽』『走れメロス』『人間失格』などの作品名と共に思い出されるのが『富嶽百景』の「富士には月見…

「神は細部に宿る」。稀代の名刑事・平塚八兵衛 

(第129号、通巻149号) 「ケンカ八兵衛」、「落としの八兵衛」、「捜査の神様」。様々な異名を奉られた稀代の名刑事・平塚八兵衛。20日、21日と2夜連続で放映されたテレビ朝日開局50周年記念ドラマ『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』を観て、ディテール…

梅雨と五月晴れ

(第128号、通巻148号) 梅雨(つゆ)のない北海道を除く日本列島全域が今月11日までに梅雨入りした。梅雨には異名が多い。その語源もさまざまだ《注1》。『奥の細道』(松尾芭蕉)の「五月雨を あつめて早し 最上川」の中の「五月雨(さみだれ)」は最も知…

「七変化」の紫陽花、花言葉も「七変化」 

(第127号、通巻147号) 紫陽花(あじさい)は、前回のブログで書いたように日本原産の植物である。にもかかわらず、「紫陽花」という別の花(ライラック?)の漢名が誤解されたまま日本で「あじさい」として用いられるようになったわけだが、それ以前「あじ…