2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「4月は残酷な月」――辞書の個性

(第69号、通巻89号) 4月は出発の月であると同時に別れの月でもある。私の第二の職場でも、有能で頼りがいのある親しい仲間たちとのつらい別れが相次いだ。「4月は残酷な月である」。惜別のたびに、英国の詩人T.Sエリオットの『荒地』の冒頭の一節が思い…

「垣間見せる」に続いて「垣間聞く」も登場

(第68号、通巻88号) 「垣間(かいま)見る」にせよ、「垣間見せる」にせよ、「かきねの間、すき間」の意の「垣間」という語との複合語と思っていた。ところが、今度のテーマを取り上げるに当たって「かいま」を大小の辞書を調べてみても、意外なことに「か…

『されど われらが日々』の言葉遣いを「垣間見る」

(第67号、通巻87号) 60年安保闘争を時代背景にした青春群像。柴田翔著『されど われらが日々――』(文春文庫)を約40年ぶりに再読した。エリート大学生達の思想と恋愛の軌跡を描いた青春文学の名作である。今、読み返して見ても、テーマといい、筆力といい…

「君子豹変」。本来はいい意味だったのだが…

(第66号、通巻86号) 「君子は豹変す」と言えば、どんなことを思い浮かべるだろうか。プラス的なイメージとマイナス的イメージとの二者択一なら、大半の人がマイナス的イメージの方を選ぶのではあるまいか。 「君子」は、「聖人君子」という熟語があるよう…

「気が置ける」人とは?

(第65号、通巻85号) 「気が置けない」はたいていの国語辞典に載っているが、肯定形の「気が置ける」が収録されている辞書はほとんどみられない《注》。前回のブログで参考にした『ことわざ成句使い方辞典』(大修館書店)は、文学作品からの用例まで添えて…