2009-01-01から1年間の記事一覧

「紫陽花」とライラックの奇縁?!

(第126号、通巻146号) 6月の花といえば、紫陽花(あじさい)である。私の住む大船からJR横須賀線で一駅の北鎌倉にアジサイ寺として有名な明月院がある。1年前訪ねた折には、外国人を含むおおぜいの観光客が訪れていて列をなすほどだった。明月院の紫陽…

「リラ冷え」の札幌とライラック

(第125号、通巻145号) 「智恵子は東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。」で始まる高村光太郎の有名な詩がある《注1》。言葉の表面だけをもじって言えば、札幌には「梅雨が無いといふ」。が、その代わり?「リラ冷え」がある。 札幌出身の職…

「フェーズ」に見る安易なカタカナ表記

(第124号、通巻144号) 新型インフルエンザの流行は、国内での人から人への感染が確認されたことにより、社会生活にも深刻な影響をもたらす新たな局面に入った。あえて英語で表現すれば、‘entered upon a new phase’となる。「フェーズ」。このカタカナ語が…

「検疫」の語源の数字と『聖書』の中の「40」との関係?!

(第123号、通巻143号) メキシコに端を発した新型インフルエンザに関連して「検疫」のあり方が様々な形でニュースに取り上げられている。先週金曜日(5月8日)のテレビ朝日「報道ステーション」では、ゲストコメンテーターの月尾嘉男東大名誉教授が検疫と…

「暮れなずむ」の‘双子’ならぬ‘双語’「暮れかぬる」

(第122号、通巻142号) 前回のブログで「暮れ泥(なず)む」を取り上げた際、筆を滑らせて「季語は春」と言い切りながら、その直後に「注」で「疑問が生じてきた」と書き加えた。マッチポンプのようでお恥ずかしい限りだが、当ブログの愛読者の方から「暮れ…

「暮れなずむ」と「つるべ落とし」

(第121号、通巻141号) 4月ももう終わりだが、日の暮れるのがずいぶん長くなった感じがする。ほんの2カ月ほど前までは、仕事を終えて勤め先を出る時には外はもう暗くなっていたものだが、今は、6時を過ぎてもまだ明るい。夕日が沈んだ後もしばらくは暮れ…

「藤」の字解きは?「巳」「已」「己」はどう区別するか。

(第120号、通巻140号) 冒険家の植村直己(なおみ)さんがアラスカのマッキンリーで消息を経ってから已(すで)に四半世紀。国民栄誉賞を受賞したのは25年前の4月19日である。「直己」の「己」はふつう「おのれ」といい、「み」とは読まないが、ご本人は「…

「よみする」嘉(カ)の意味と用法

(第119号、通巻139号) 今月10日に結婚50年を迎えられた天皇、皇后両陛下の記者会見。映像・音声入りのTVニュースは見られなかったが、新聞各紙が伝えた一問一答形式の会見の詳報は目を通した。その中で「言語楼」としての私が興味をひかれたのは天皇の次の…

「世間ずれ」した人同士だと話も「なし崩し」に「煮詰まる」?

(第118号、通巻138号) 「煮詰まる」という言い方がある。元々の意味は、「煮えて(鍋など容器の中の)汁・水分がなくなる」ことだ。「汁が煮詰まったところで火を止める」などと使われる。その原義が比喩的に転用され、「会議、交渉、話し合いなどで議論が…

「他山の石」の誤用〜正用の濃淡

(第117号、通巻137号) 「他山の石」という成句ほど様々な意味、ニュアンスで用いられている言葉はそれほど多くないのではあるまいか。と、思ったのは、『私の語誌 1〈他山の石〉』(三省堂)を読み直したのがきっかけだ。この本の編著者は、個性的な語釈…

ハードルが低くなった「敷居が高い」の用法

(第116号、通巻136号) 「漱石の孫」で有名な漫画家にしてコラムニストの夏目房之介氏の『孫が読む漱石』が今月初め、新潮文庫版に装いをかえて刊行された。この文庫本に触発されて漱石の作品のいくつかを久しぶりに読み返していたところ『こヽろ』の中にこ…

「#」は‘シャープ’ではない

(第115号、通巻135号) 文字の代用の役割を持つ記号の話題を紹介した前回に続いて、記号に関連したテーマを取り上げるが、今回は軽いトリビアもので一服しよう。 我が家の固定式電話機。最近は「イエ電」と言うようだが、シャープ製である。一昔前に買った…

「々」「〃」「ゝ」は漢字か?読み方は?

(第114号、通巻134号) 前回は、読み方が一番多い漢字として「生」を取り上げたが、実をいうと「生」よりはるかに多様多彩で何通りにも読み方のできる‘表記’がある。標題の「々」「〃」「ゝ」などの一群である。 踊り字とか畳字(じょうじ)とか重ね字ある…

読み方が一番多い漢字は「生」。何通りあるか? 

(第113号、通巻133号) 「生と死」。対義語でこれほど両極端な関係のものはあるまい。「せい」と「し」。実は意味だけでなく、読み方の上でも際だって対照的だ。「死」の読みは音、訓とも同じで、「し」一つしかない。それに対して「生」は音読みこそ「せい…

「しっせい」は「叱声」とは限らない

(第112号、通巻132号) 「神は細部に宿る」という言葉がある。ちょうど1週間前の18日付け新聞各紙に一見したところ特に違和感はないが、よくよく考えてみると「細部」に問題のある記事が掲載された。問題というのは、中川昭一財務・金融相の辞任記者会見で…

「同じ読み方の漢字」。こんなに多いとは吃驚、びっくり、ビックリ! 

(第111号、通巻131号) 日本語は同音異義語がきわめて多い言語である。試みにパソコンのワープロソフトに任意の言葉をひらがなで2文字打つだけでよく分かる。例えば、いま使ったばかりの「うつ」。変換キーを押すと「打つ」のほか「撃つ」「討つ」「撲つ」…

身近にある「和尚読み」?!

(第110号、通巻130号) 湯桶読み、重箱読み、慣用読みなど、これまで漢字の読み方を様々取り上げてきたが、今回は「和尚読み」を紹介しよう。「和尚」は、一休和尚でおなじみの通り「おしょう」と読むのがふつうだ。と、持って回った言い方をしたのには、理…

「杉原」を「すいはら」と言う「名目(みょうもく)読み」とは

(第109号、通巻129号) ここ2、3週間、漢字の読み方をテーマにしたブログを書いてきたが、その過程で「名目読み」なる用語と出合った。「めいもく」ではなく「みょうもく」と読む。何冊かの辞書、参考書類を見ると、決まって漱石の『吾輩は猫である』から…

「老人語」余聞……高年、高齢、老齢、老人 

(第108号、通巻128号) 社会の高齢化が進んで「老人」という語に敏感に反応する人が多くなったせいなのか、先週のテーマ「老人語」もまた予想を上回る大きな反響があった《注》。 前回も紹介したように、「老人語」とは『新明解国語辞典』第6版(三省堂) の…

はて「老人語」とは?

(第107号、通巻127号) 「慣用読み」を扱った先週の当ブログはいつもより反響が大きく、1週間のアクセスが2,000pv(ページビュー)を超えた。反響の中で意外だったのは、「『固執』の読みの説明についての指摘だった。「‘こしゅう’と言うのは『‘こしつ’の老…

「慣用読み」に“寛容”でも逸脱し過ぎると…

(第106号、通巻126号) 言葉を題材にこんなブログを書いていると、緩急自在に言葉を操る人間と思われがちだが、私の場合は逆である。たった今、文脈を少々無視して「緩急(かんきゅう)」という言葉を強引に使ったが、学生時代にこの漢字を「だんきゅう」と…

「続柄」は「重箱読み」か「湯桶読み」か、それとも……

(第105号、通巻125号) 1月も7日を過ぎれば、正月気分はとうに消え、普段の生活に戻っているだろうが、三が日はおせち料理でくつろいだ人も多かったことだろう。おせち料理といえば、お重。めでたいことを重ねるという願いを込めて重箱に数の子や伊達巻き…