アクセス100万pv突破のお礼と一時休載のお断り

(第298号、通巻318号) 当ブログ「言語郎」は9月27日午後にアクセス数が100万pv.を超えました。2007年1月10日付けで実質的な第1号「武士の『一分』とは」を発信してから5年9カ月。この間、(イタリア旅行に出かけて休載した1回を除いて)毎週1回、水…

「うがった見方」とは

(第297号、通巻317号) うがった見方をすると、文化庁の国語世論調査の対象になった単語について当の文化庁の担当職員も“正解”の意味で使っている人はきわめて少ないと思う。 文化庁が平成7年度(1995年度)からは毎年行っている「国語に関する世論調査」…

「コスモス」。花と宇宙

(第296号、通巻316号) 年間を通して気温が低い故郷の釧路は、桜(ソメイヨシノ)の開花も関東地方より1カ月半から2カ月遅い。ところが、桜でも「秋桜(アキザクラ)」が咲くのは早い。私が9月始めに高校時代のクラス会で帰省した折には、街中のあちこち…

旅客機の出発時間とは離陸時間と違うのか

(第295号、通巻315号) 先週、故郷の霧の街・釧路へ高校時代のクラス会に出席のため出かけ、トンボ返りした。地元でガスと呼ぶ“海霧”《注1》で飛行機が欠航したり遅れることがたまにあるので、万一に備え、帰りは早めの便を予約していた。ところが、釧路市…

「汚名挽回」という用法も可、という説

(第294号、通巻314号) 「汚名挽回」という言い方は誤用ではない――。『明鏡国語辞典』(大修館書店)の編者グループが唱える説は、理論的には筋が通っている。同辞典編者の北原保雄氏のグループが執筆している単行本『問題な日本語』の小さなコラムで次のよ…

「汚名挽回」と「汚名返上」

(第293号、通巻313号) 先週のブログの末尾で予告したように今回は、「雪辱を晴らす」「雪辱を果たす」と似た用法の「汚名挽回」「汚名返上」を取り上げる。この2語のうち正しいのはもちろん2番目の「汚名返上」であり、「汚名挽回」は典型的な間違い・誤…

「雪辱を晴らす」は重言、正しくは「雪辱を果たす」

(第292号、通巻312号) ロンドン五輪後の余熱も、先日行われたメダリストたちの銀座パレードで一段落した感じだが、五輪に限らずスポーツや選挙など勝ち負けに関係する世界では「雪辱」という言葉がしばしば登場する。「北京五輪の雪辱を目指し、猛練習して…

辞書も追認「鳥肌が立つ」の新用法

(第291号、通巻311号) メダルラッシュに湧いたロンドン五輪が閉幕した。14日付けの朝日新聞の1面コラム、天声人語は「日本選手団のメダルは過去最多の38個。これにて彼らは重圧から、我らは寝不足から解放される」と書いた。まことに言い得て妙だ。 テレビ…

「馬鹿言うな」「馬鹿言え」否定形と肯定形

(第290号、通巻310号) 先週扱った「何気に」の同類の言葉に「さりげに」がある。本来なら「さりげない(く)」と言うべき言葉だ。漢字で書くと「然り気無い」。『明鏡国語辞典 第2版』(大修館書店)には「はっきりした考えや深い意図もなくふるまうさま…

「なにげに」気づいた「なにげない」新語法

(第289号、通巻309号) なにげなく(何気無く)テレビのスイッチを入れたら、ロンドン五輪の女子柔道57キロ級で松本薫選手が日本初の金メダルを取った場面だった――この文章の冒頭の「何気無く」の「無」を省いて「なにげ(何気)に」とした場合、少々違和感…

様々な感情表現

(第288号、通巻308号) 事実関係を第三者に伝えることよりも、感情・気持ちを表現することの方がはるかに難しい。だからなのか、文章が巧くなろうと思ったらラブレターを書く練習をたくさんするのが近道、という冗談めいた話もある。が、思いの丈を綿々とつ…

友の急逝を悼む

(第287号、通巻307号) 小説家や詩人は、「うれしい」とか「悲しい」とかの感情を表すのに、その形容詞を直接使わずに「うれしい」「悲しい」という気持ちをいかに表現するかに腐心するという。 職場時代、格別に親しかった同僚の一周忌を前にして仲間うち…

首相が使い分け?「声」と「音」

(第286号、通巻306号) ここ最近2、3代続いて首相の国語力が問題になったことがあった。その点、現在の野田首相は、弁舌には定評があり、内容はともかく、言葉遣いでこれまでは大きな間違いはなかった。しかし、先月29日夜、関西電力の大飯原発の再稼働反…

「うるう年」の「閏」の意味は?

(第285号、通巻305号) メディア論から江戸地理、天文学まで博覧強記の友人から「7月1日です。2012年も折り返し点。本当に時間の流れは速いですね。今年は2月29日がありました。そして本日うるう秒の1秒が加わりました。例年より1日と1秒長い筈なのですが…

「半夏生」と化粧

(第284号、通巻304号) 文は書き出しが難しい。 朝日新聞夕刊be面で狂言師の野村萬斎が「きょう.げん.き!!」という欄でエッセイを連載している。夏至の翌日の6月22日付けの見出しは「素顔でも美しく」で次のように書き始めている。 [ もうすぐ半夏生(は…

「水無月」の語源の思い込み

(第283号、通巻303号) 「五月晴れ」をテーマにした先週号のブログは、1週間のアクセスがあとほんのわずかで8000pv.に迫る勢いを見せ、最近では珍しい“ヒット”となったが、実は枝葉の部分で正確とは言えない書き飛ばしがあったので、補訂したい。 文の最後…

「五月晴れ」は6月の空のこと?!

(第282号、通巻302号) 関東甲信地方が梅雨入りした9日は、私の住む団地近くの小学校の運動会が開かれることになっていたが、雨で順延。翌10日は打って変わって朝から晴れ間が広がる運動会日和。まさに「五月(さつき)晴れ」だ。 しかし、今は6月。なの…

「慮る」は「おもんばかる」か「おもんぱかる」か

(第281号、通巻301号) なにかを計画する時に周囲との関係や将来への影響などを考え合わせることを「慮る」という。例えば「相手の立場を慮る」、「事態を慮る」などと使う。この「慮る」をどう発音するか。 「おもんばかる」。私自身は、そうとしか読みよ…

「生保」を「ナマポ」と読むなんて!

(第280号、通巻300号) 東京・秋葉原の街頭で若者たちに「生保」と書いた文字を見せ、どう読むかインタビューしているテレビ番組があった。ほんの数日前のことだ。途中から覗いたテレビだったので、番組の前後の流れが分からず、地名のテストかと勘違いして…

「他人事」は「ひとごと」か「たにんごと」か

(第279号、通巻299号) 日常会話ではもちろん、職場の会議などでも自分に直接関係のないテーマが話題になった時には「ひとごと」のように聞き流すことがよくある。この「ひとごと」を漢字でどう書くか。私の場合、「その問題は他人事で済まない」と、表記す…

「うまっ」「すごっ」は古くて新しい用法

(第278号、通巻298号) 「お袋の味」は年齢があがるにつれて懐かしさが増すもののようだ。30代の半ばを過ぎた長男は、大型連休などで妻子と共に来宅した折には、自分の母親の手作り料理を口に運ぶたびに「うまっ!」を連発する。もちろん「旨い」という賛辞…

いずれアヤメかカキツバタ

(第277号、通巻297号) 「アヤメ」とくれば、「いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)」《注1》という成句が思い浮かぶ。アヤメは前号で取り上げた時に百科事典などで少々調べたので、ある程度は分かる。カキツバタ《注2》についてはよく知らなかった…

「六日の菖蒲、十日の菊」

(第276号、通巻296号) 30代の始めのころ、転勤後3カ月も経ってから暑中見舞いを兼ねて友人や知人、先輩にハガキで簡単な挨拶状を出したことがある。この種の挨拶状に返信をいただくことはあまりないが、そのときは、親しい先輩の1人からすぐに返信があっ…

「時を分かたず」は辞書を「分かつ」

(第275号、通巻295号) 国の特別天然記念物「トキ」のひなが生まれたというニュースから「時」を連想し、数年前に「時」の慣用句をテーマに書いたブログを思い出した。文化庁の「国語に関する世論調査」が「時を分かたず」の意味を尋ねたアンケートに対し、…

言葉を逆さに見る「逆引き辞典」

(第274号、通巻294号) 辞書マニアを自称する私の部屋の書棚には、何十冊かの辞書、辞典・事典があるが、長い間ほとんど開いたことのない種類の辞書が奥に押し込められたままになっている。その名は「逆引き辞典」。 辞書の見出しは、国語辞典なら、頭から…

百科事典の検索機能

(第273号、通巻293号) 単行本を読んだ後になって、文中のあることを確かめようとすると、事前に付箋でも貼っておかない限り該当個所がなかなか見つけられない。目次はあるが、巻末に索引を備えていない本が多いからだ。 その点、百科事典は違う。前号で『…

書籍版は廃刊「ブリタニカ百科」

(第272号、通巻292号) 春4月。入学式、新学期あるいは社会人へのスタートに合わせて、この時期に辞典を買う人が多い。たいていは、国語辞典か漢和辞典、英和辞典の類(たぐい)だろうが、中には奮発して百科事典を求める家庭も、かつては少なくなかった。…

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは言うが……

(第271号、通巻291号) 万葉集に1番多く登場する花はハギ。140首余りあるという。次いで118首のウメ。意外なことにサクラは、ウメの3分の1しか詠われていない《注1》。しかし、現代日本でダントツに人気があるのはサクラだろう。 桜と梅。二つの樹木の…

風光る月

(第270号、通巻290号) 山形県A町の小さな小学校のN校長から定期的にブログ通信《注》が送られてくる。先日届いた最新号は卒業式での校長あいさつ特集だった。タイトルに「風光る3月に旅立つ君へ」とあった。当ブログの前号と前々号は卒業式の定番の歌に…

『蛍の光』の「かたみ」は「形見」か

(第269号、通巻289号) 悲恋映画の傑作の一つ「哀愁」《注1》。主人公役のロバート・テイラーとヴィヴィアン・リーの2人が初めてのデートでダンスをした時の曲は、映画の中では「別れのワルツ」といった。ロウソクが1本、また1本と消されて暗くなってい…