百科事典の検索機能

(第273号、通巻293号)
        
     単行本を読んだ後になって、文中のあることを確かめようとすると、事前に付箋でも貼っておかない限り該当個所がなかなか見つけられない。目次はあるが、巻末に索引を備えていない本が多いからだ。

     その点、百科事典は違う。前号で『ブリタニカ百科事典』の書籍版廃刊をテーマにした際、一覧性が失われることに寂しさを感じると書いた。索引も当然、ついている。事典をよく使う人に言わせると、索引のない百科事典は価値が半減するとまで極論する。幸い、私の持っている小学館の『日本大百科全書』も、索引だけを納めた第25巻を完結編としている。

    しかし、索引を使いこなすのは楽ではない。例えば、ただ今北上中のサクラ前線。『日本大百科全書』のサクラの項を見ると、本文だけで10ページにわたって説明されているが、その中には、「季語」「花見」「盆栽」などの関連語が数多く登場する。索引の巻を調べると、これらの言葉が12の巻に分かれてそれぞれに詳しい説明が記載されていることが分かるのだが、重い百科事典を1冊、1冊開くのはついおっくうになる。ものぐさな私のような人間には、宝の持ち腐れだ。

    電子媒体の百科事典は、その点、ずぼらな辞書好き人間に向いている。季語、花見、盆栽などの関連語に青い文字でリンクが張ってあれば、そこをクリックするだけで該当の巻(ページ)の項目に一足飛びにいける。さらにそこにも参考項目のリンクがあれば、次から次へと飛んで調べることができる。

    「花見」を例に取れば、「主として桜の花を観賞するため、野山に出て飲食し遊ぶ行事」とまず、国語辞典的な意味を説明した後、「もとは個人の趣味や風流の行事ではなく、農事の開始に先だつ物忌みのため、屋外に臨時のかまどを設けて飲食する行事であった」などと30ページ近くにわたって、その由来から歴史、名所、風俗まで詳説している。

    このような検索機能は、別に百科事典に限ったことではなく、ウェブの特性であるが、書籍版には真似の出来ない、重宝なツールになっている。