2010-01-01から1年間の記事一覧

「“ヘボン”とは私のこと?」と“ヘップバーン”

(第178号、通巻198号) 横浜が開港して150周年を迎えた昨年、横浜市は「Y150」と銘打って記念日の6月2日を中心に様々なイベントを開催したが、歴史を振り返れば、開港してわずか4カ月余の1859年10月17日、日本の文化、教育、宗教、医療など多方面に大き…

「新常用漢字」余話

(第177号、通巻197号) 当用漢字から常用漢字へ、そして「改定常用漢字」へ。先頃、文化審議会の国語分科会で改定の答申案が承認された。年内に正式決定される運びという。日常的に用いられる「基本漢字」がほぼ30年ぶりに改定されるわけだ。 新しく追加さ…

「ルーピー鳩山」。米紙の首相像も「宇宙人」?!

(第176号、通巻196号) 「言葉が軽い」「リーダーシップに欠ける」「発言が二転三転し無責任」などとこのところ酷評され続けている鳩山首相。昨年9月の内閣発足時に70パーセント台を超えていた世論調査の支持率も坂道を転げ落ちるように下落、ついに危険水…

鳩山首相の「腹案」と沖縄県民の「心」

(第175号、通巻195号) 沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題をめぐって鳩山首相は迷走発言を繰り返し、内閣はダッチロール状態だが、3月31日の党首討論で首相は谷垣自民党総裁に「(移設先について)腹案を持ち合わせている」と明言した。その後も「腹案」と…

「甍の波」より低くなった平成「鯉のぼり」事情

(第174号、通巻194号) 道産子の私が瓦葺(かわらぶき)を初めて「認識」したのは、高校の修学旅行で青函連絡船《注1》に乗り、「内地」に渡った時だった。下船して乗り換えた列車の窓から田園の中に点在する民家が見えたが、北海道のものとどこか違う感じ…

「目に青葉…」ではなく、正しくは「目には青葉…」とは

(第173号、通巻193号) 三寒四温どころか一日ごとに気温が乱高下、桜の花びらの上に雪が積もるような異常な春だったが、気がつけばいつの間にか青葉が目にしみる季節になっていた。青葉、とくれば反射的に連想するのが「目に青葉 山ほととぎす 初がつお」と…

北の「湘南」、数学界の「ノーベル賞」、東洋の「サンモリッツ」……

(第172号、通巻192号) 前回のブログについて「内容はともかく、着眼点がおもしろかった」と知り合いからのメールにあった。そのおだてに乗って今回は「小京都」「小江戸」の材料集めで拾った小話をいくつか並べてみよう。ほとんどは、本家の名前が有名であ…

「小江戸」(こえど)と「小京都」(しょうきょうと)

(第171号、通巻191号) 「世に小京都は数あれど、小江戸は川越ばかりなり」と言われる川越を先日訪れる機会があった。有名な蔵造りが続く1番街商店街。想像していたよりは短い通りだったが、それでも鬼瓦、重厚な黒塗りの壁面に観音開扉の蔵が集中して並び…

「忖度」と上下関係

(第170号、通巻190号) 「忖度」を「じゅんど」と読んだら、そんな読み方はデタラメ、と冷笑されるのがおちだろう。ところが実はそういう読み方もあるのだという。日本最大の権威ある国語辞典が典拠を添えて紹介しているのだから間違いではない《注》。ただ…

続・京の祇園で「祇園精舎の鐘の声」は聞こえるか

(第169号、通巻189号) 平家物語の「祇園精舎」が古代インドにあった寺だとすると、その鐘の声が京都の祇園で聞こえるはずはない。ただ、京の「祇園」はそもそも「祇園精舎」から取った名前なのである。 釈迦が説法活動の拠点としていた祇園精舎は、「牛頭…

京の祇園で「祇園精舎の鐘の声」は聞こえるか

(第168号、通巻188号) 前回のブログで取り上げた文楽と狂言。私が鑑賞した舞台は、京都観光客向けの「ギオンコーナー」(伝統芸能館)だ。名前の通り、花街・祇園にある。祇園といえば、舞妓さんだ。花のかんざし、だらりの帯にポックリをはいて歩く姿が思…

黒衣と狂言回し

(第167号、通巻187号) 文楽、狂言、雅楽、京舞、茶道、琴、華道。いずれも日本の代表的な古典芸能である。しかし、茶道、琴、華道はともかく、前の方の4種類は平均的日本人にはふだん縁遠い芸能だろう。私自身、テレビなどでチラリ目にしたことがあるとい…

「ご査収ください」。それに対する返事は?

(第166号、通巻186号) 学窓を巣立って間もなく社会人になる若者たち。これまでの人生で使ったことのない言葉に直面し戸惑うことも多いはずだ。そんなビジネス用語の一つに「ご査収ください」がある。査収の意味について、小学館『大辞泉』は、「金銭・物品…

「ひな祭り」と桃太郎 

(第165号、通巻185号) 3月3日は「桃の節句」。私の家族にとっては「雛(ひな)祭り」を祝う日であると同時に特別の記念日でもあるのだが、なぜ「桃の節句」というのか、これまで深く考えたことはなかった。単に桃の花が咲く時季《注1》といっしょだから…

「歯がみ」に見る見出しの苦労 

(第164号、通巻184号) 「目は口ほどに物を言う」「目から鼻へ抜ける」「目には目を、歯には歯を」など、日本語には体の部位を取り入れた慣用句、成句が多い。特に多いのが「口」から始まる語。ついで「目」。一方で「歯」で始まる語は意外に少ないのだが、…

妻がそばにいては「あずましくない」?

(第163号、通巻183号) 札幌に単身赴任していた年下の友人が東京に戻ったので、内輪で歓迎会を開いたところ、ほかにも北海道勤務経験者・東北出身者がいたこともあって北海道弁の話題で盛り上がった。「ゴミを投げる」「手袋をはく」「ゆるくない」など、こ…

校正と校閲の違い?! 

(第162号、通巻182号) 「校正に携わった専門書や辞典 計27500ページ」。2月8日付け朝日新聞夕刊の「月曜ワーク」」という特集面に、こんな見出しの記事が載った。「凄腕(すごうで)つとめにん」の一人として岩波書店の校正部課長の仕事ぶりを紹介したも…

道産子も「雪投げ」は「ゆるくない」 

(第161号、通巻181号) 2月に入ったとたん、首都圏に雪が舞った。私の住む横浜の街並みも昨日2日の朝は久しぶりにうっすらと雪化粧。道産子には、いっときの懐かしい光景だったが、同時に「雪投げ」のつらさも思い出した。 国語辞典で「雪投げ」を引くと…

「朝三暮四」を「朝令暮改」と勘違いしてた?鳩山首相 

(第160号、通巻180号) 最近の国会は、政策論争だけの場ではなく、まれに国語力を試す場にもなる。 先週22日(金)の衆院予算委員会。麻生政権の手で編成された2009年度1次補正予算の事業を執行停止しながら2次補正予算案で復活させたことについて自民党…

「コウガイ」と聞いて思い浮かぶ単語は?

(第159号、通巻179号) テレビのミステリードラマ「刑事コロンボ」シリーズが、NHK衛星ハイビジョンで再放送されている。先週土曜日(16日)に放映された「第三の終章」(第22話)でオヤッと感じるセリフが何回も出てきた。ドラマの設定は、小説の出版に…

「光陰矢の如し」の成句と英文解釈余話

(第158号、通巻178号) 「少年老いやすく学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず」。中学生の頃、剣道をやっていた友人が道場で詩吟も習っていた。いろいろ難しい漢詩をよく吟じているのを聞いたが、今も憶えているのが冒頭の一節だ。当時は意味も十分に分か…

「新年明けましておめでとう」は誤用か

(第157号、通巻177号) 年賀状で「新年明けましておめでとう」という文面を見るたびに少しばかりひっかかりを感じる。「新年」と「明ける」が重複表現になる、と若い頃に聞いて以来だ。 改めてその理由を考えてみると、「明ける」という単語の元々の意味に…