2008-01-01から1年間の記事一覧

「意外」な反響の大きさを奇貨として続編

(第74号、通巻94号) 「意外に」と「意外と」の違い――前回のテーマは、内容が地味なのに加えて書き方もくどくなってしまったので、注目度が落ちるとハナから思い込んでいたら、まったくの読み違いだった。先週水曜日の更新初日からアクセスが “殺到”し、1…

「意外に」と「意外と」に違いはあるのか――辞書の個性

(第73号、通巻93号) ちょうど1週間前、学生時代に非常に親しかった友人と30数年ぶりに再会する機会があった。つもる話に花が咲き、談たまたま最近の子どもたちの国語力低下に及んだ時、興味をそそられる問題を出された。「意外」という語の用法についてだ…

「エン麦」は馬の飼料か人間の主食か――辞書の個性 

(第72号、通巻92号) 先月出版された講談社学術文庫『英語の冒険』(メルヴィン・ブラッグ著、三川基好訳)に、サミュエル・ジョンソン博士の『英語辞典』《注1》のユニークな語釈をめぐるエピソードがいくつか載っている。中でも好事家の間で有名なのが「…

「芋辞書」とは――辞典の個性は編纂者の個性

(第71号、通巻91号) 「芋(いも)」という言葉から連想するのは? 男爵いもやサツマイモを思い浮かべる人もいれば、肉じゃが、ポテトサラダ、ジャーマンポテトなどジャガイモ料理を頭に浮かべる人もいよう。しかし、このような直接的な連想を別とすれば、…

「とどのつまり」完璧な辞書はない

(第70号、通巻90号) 辞書のことを「たかが字引」、どれも似たようなものと思い込んでいる人もいようが、「されど字引」である。それぞれに個性がある。前回のブログ「4月は残酷な月」で紹介したように、辞書の個性は、語の定義、語釈だけでなく、用例文や…

「4月は残酷な月」――辞書の個性

(第69号、通巻89号) 4月は出発の月であると同時に別れの月でもある。私の第二の職場でも、有能で頼りがいのある親しい仲間たちとのつらい別れが相次いだ。「4月は残酷な月である」。惜別のたびに、英国の詩人T.Sエリオットの『荒地』の冒頭の一節が思い…

「垣間見せる」に続いて「垣間聞く」も登場

(第68号、通巻88号) 「垣間(かいま)見る」にせよ、「垣間見せる」にせよ、「かきねの間、すき間」の意の「垣間」という語との複合語と思っていた。ところが、今度のテーマを取り上げるに当たって「かいま」を大小の辞書を調べてみても、意外なことに「か…

『されど われらが日々』の言葉遣いを「垣間見る」

(第67号、通巻87号) 60年安保闘争を時代背景にした青春群像。柴田翔著『されど われらが日々――』(文春文庫)を約40年ぶりに再読した。エリート大学生達の思想と恋愛の軌跡を描いた青春文学の名作である。今、読み返して見ても、テーマといい、筆力といい…

「君子豹変」。本来はいい意味だったのだが…

(第66号、通巻86号) 「君子は豹変す」と言えば、どんなことを思い浮かべるだろうか。プラス的なイメージとマイナス的イメージとの二者択一なら、大半の人がマイナス的イメージの方を選ぶのではあるまいか。 「君子」は、「聖人君子」という熟語があるよう…

「気が置ける」人とは?

(第65号、通巻85号) 「気が置けない」はたいていの国語辞典に載っているが、肯定形の「気が置ける」が収録されている辞書はほとんどみられない《注》。前回のブログで参考にした『ことわざ成句使い方辞典』(大修館書店)は、文学作品からの用例まで添えて…

「気が置けない」人は心許せる間柄か

(第64号、通巻84号) 勝手に名付けた「三大誤用語」の3番目に挙げるのは「気が置けない」(あるいは「気の置けない」)という慣用句だ。これも会話でしばしば使われる言い回しであるが、「役不足」と同様、逆の意味に取っている人が多い。例によって、文化…

「役不足」のミステリー

(第63号、通巻83号) 半年前から勤め始めた私の「第二の職場」の周辺は、街並みがしゃれているせいか、しばしばTVドラマのロケ地になる。つい2週間ほど前には、テレビ朝日の「赤川次郎ミステリー4姉妹探偵団」(最終回)の撮影が行われ、そのロケ・シーン…

「流れに棹さす」の意味は変わった?!

(第62号、通巻82号) 「流れに棹さす」、「役不足」、「気が置けない」。いずれも、間違いやすい言葉の代表的な例として受験対策の参考書や日本語物知り読本のたぐいによく出てくる。「三大誤用語」とでもいうべき存在だから当ブログでわざわざ扱う必要はな…

一人で大笑いしても「爆笑」とは言わない

(第61号、通巻81号) 前号で当ブログの5万pv突破を報告したばかりだが、実はまた記録が生まれた。先週の水曜日の更新から今日3月5日の更新までの1週間のpv数が2300を超えたのである。これまでは週平均1000前後、多くても1600台だったから、地味な当ブロ…

「すべからく」は「全て」ではない(改訂版)

(第60号、通巻80号) 当ブログは、先週金曜日の2月22日にpv(ページビュー)が5万の大台を超えた。“愛読者”が増えているのは喜ばしい限りだが、同時に、言葉を題材に文章を書くことの難しさも実感している。人によって言語観が違う。その前提になる経験、…

「雨模様」とは、降っているのか、いないのか

(第59号、通巻79号) 文化庁の「国語に関する世論調査」(平成15年度)には「雨模様」の意味を尋ねる質問もあった。設問に添えられた例文は「外は雨模様だ」というものだ。この文の回答は、1)「小雨が降ったりやんだりしている様子」45.2パーセント、2)…

「さわり」は、話の「出だし」か「聞かせどころ」か「要点」か ?!

(第58号、通巻78号) 前回のブログは、予想外に反響が大きかったので、今回も引き続いて文化庁の「国語に関する世論調査」(平成15年度)の結果の中から興味を引きそうな語句を一つ取り上げてみたい。 調査の内容を紹介した記事には「さわり」という語句も…

「憮然」、「姑息」、「押しも押されもせぬ」の意味・用法は?

(第57号、通巻77号) 普段あまり利用しない漢語辞典の一冊をたまたま開いたら、言葉に関する新聞記事の切り抜きが2枚出てきた。あとでスクラップ帳に貼るつもりでいて忘れたのだろう。その1枚に興味深い内容が書かれていた。「愕然・刺繍・剥製・破綻……」…

「ピンポン」は卓球だけではない――オノマトペ三題噺(ばなし)

(第56号、通巻76号) 『源氏物語』、『千年紀』から一転して、今回は骨休みの軽い話。「ピンポン」と言うと、私が子どものころは卓球という意味しかなかった。しかし、現在は卓球以外のことを指すことの方が目立つように思う。 一つは、玄関などのドアのチ…

「千年紀」、「ミレニアム」、「Y2K」

(第55号、通巻75号) 前回は「源氏物語千年紀」の話題から始めて「ミレニアム」という言葉で閉めくくったが、ミレニアムで思い出すのは、「Y2K」問題である。今やまったく聞かれなくなったが、1990年代の半ば過ぎから様々な分野にわたり、世界的な規模で論…

『源氏物語』とミレニアム

(第54号、通巻74号) 今年は、『源氏物語』の存在が記録の上で確認されてからちょうど1000年の節目の年に当たるのだそうだ。新聞の雑誌広告に載っていたのを目にしたのがきっかけで先日、初めて知ったことなのだが、2008年を「源氏物語千年紀」と位置づけ、…

日本の「時」は子年から始まった

(第53号、通巻73号) 年賀状の季節になると干支が話題になるが、ふだんは、遠回しに年齢を尋ねる時など以外はまず意識しないのではあるまいか。今回は、趣向を変え「子(ね)年)」にからむトリビアを独断もまじえて紹介しよう。 今年の干支の「子」は、十…

たかが年賀状、されど年賀状。「元旦」に夜はないのだ 

(第52号、通巻72号) 今年の年賀状の配達は、例年になく早かった。元日の朝。ふだんより遅く9時過ぎに新聞を取ろうと郵便受けボックスを開けたら、朝刊だけでなくすでに賀状の束が入っていて驚いた。二、三の友人の話でも、ずいぶん早い時間帯に届いていた…