「ピンポン」は卓球だけではない――オノマトペ三題噺(ばなし)

(第56号、通巻76号)
    
    『源氏物語』、『千年紀』から一転して、今回は骨休みの軽い話。「ピンポン」と言うと、私が子どものころは卓球という意味しかなかった。しかし、現在は卓球以外のことを指すことの方が目立つように思う。

    一つは、玄関などのドアのチャイムの音だ。「ピーンポーン」あるいは「ピンポーン」と表記し、口にする時には「ピーン」を高い音程で後ろの「ピーン」を低い音程で発音することが多い。

    もう一つは、クイズなどで「正解」、「当たり」を指す。テレビで回答者が正しい答えを言い当てた時に「ピーンポーン」と鳴らすことから日常の軽い会話でも「正解」の代わりに「ピンポン」とか「ピンポーン」という表現がよく聞かれるようになった。どちらも、オノマトペと言われる擬音語だ《注1》。

    日本語と比べると、英語などヨーロッパ語にはオノマトペがきわめて少ないといわれるが、卓球の意味で使われるピンポン(‘ping-pong’)という語は、ウェブ・サイトの「語源由来辞典」《注2》によると、1890年代にある英国人がセルロイドのボールをバドミントンの原型のバトルドア・アンド・シャトルコックというゲームのラケットで打ってみたところ、ラケットに当たると「ピン」、テーブルの上で弾めば「ポン」という音がしたことから、スポーツ用品の商標として登録されたのが始まりだという。つまり、元はオノマトペだったわけである。

    ところで、正解の意味のピンポンの反対語は「ブー」だ。不正解、外れ、ということだが、語源は分からない。ひょっとして、英語で不平、不満の意を示す「ブーイング」からきているのかな、と思ったりするが、「ピンポーン」が鳴る自信はない。


《注1》 祥伝社新書『日本一愉快な 国語授業』(佐久協著)によれば、オノマトペとは、ギリシャ語の‘onoma’(名前)と ‘poieo’(作る)の合成語で、「言葉を作る」というのが原意という。『ランダムハウス英和大辞典』の‘onomatopoeia’の項にも「造語すること」のギリシャ語から後期ラテン語を経て来た語、という説明がある。

【お詫び】 今号のブログのタイトルおよび本文で「オノマトペ」とすべきところを「オノパトペ」と誤ったまま発信し、1週間以上も間違いに気づかずにいました。お詫びして訂正します。

《注2》 「語源由来辞典」のURL(http://gogen-allguide.com/hi/pingpong.html)