一人で大笑いしても「爆笑」とは言わない

(第61号、通巻81号)
    前号で当ブログの5万pv突破を報告したばかりだが、実はまた記録が生まれた。先週の水曜日の更新から今日3月5日の更新までの1週間のpv数が2300を超えたのである。これまでは週平均1000前後、多くても1600台だったから、地味な当ブログとしては1週間のアクセス数が2300台とは信じられぬ数字だ。つい一人ほくそ笑んでしまう。

    笑うといえば、5日付け朝日新聞朝刊の「ひと」欄に、「笑い測定機」なる愉快な装置を開発した大学教授の紹介記事が載っていた。以下はその書き出し部分だ。
   〈 人間の笑いを数値化し、アッハ(aH)という単位で表す装置を開発した。「笑いを測定するなんて、アホな機械でしょ? ウハハハハッ」。笑うのが大好きだ。映画館でも面白いシーンには大爆笑。「まわりのお客さんから、白い目で見られます。大学の教授会でも、笑いすぎて怒られちゃった」 〉

    この記事にある「大爆笑」という語の使い方はちょっとおかしい。(「大」は「爆笑」の強調語とみなし)焦点を「爆笑」にしぼって話を進める。
    「爆笑」は、突然はじけるように大笑いする、というほどの意味だ。『現代国語例解辞典』第4版(小学館)にも「どっと笑うこと」とある。が、その語釈は言葉足らず、とまでは認識していなかった。笑う人の人数が関係している言葉なのだ。『明鏡国語辞典』(大修館書店)によれば、「大勢が声をあげていっせいに笑うこと」である。他の辞書をみても、「(笑うのは)大勢の人」という点で共通している。つまり、一人でいくら大笑いしても「爆笑」とは表現しないのだ。上記の記事は、前後関係からみて爆笑しているのは当の教授一人だからおかしい、ということになる。

    〈 客席を爆笑の渦へと巻き込む=1。(…中略)爆笑とは身体が勝手に笑ってしまう笑いである=2。(…中略〉本書を決して人前で開いてはいけない。何度も私は爆笑し、そのつど我に返って、ひとりであることを確かめた=3。〉

     上の文は、ある漫才コンビについての本を取り上げた数年前の朝日新聞の書評欄の抜粋である。爆笑という語が3回出てくる。うち1は、本来の用法である。2は、一種の定義だが、表現が独創的でしゃれている。問題は3の用法だ。ここで笑っているのは明らかに一人である。とすれば、国語辞典の定義に反しており、間違った使い方だ。笑止千万というほどおおげさなことではないにしても、どうせなら「何度も私は大笑し……」とした方がよかった。