2012-01-01から1年間の記事一覧

「他人事」は「ひとごと」か「たにんごと」か

(第279号、通巻299号) 日常会話ではもちろん、職場の会議などでも自分に直接関係のないテーマが話題になった時には「ひとごと」のように聞き流すことがよくある。この「ひとごと」を漢字でどう書くか。私の場合、「その問題は他人事で済まない」と、表記す…

「うまっ」「すごっ」は古くて新しい用法

(第278号、通巻298号) 「お袋の味」は年齢があがるにつれて懐かしさが増すもののようだ。30代の半ばを過ぎた長男は、大型連休などで妻子と共に来宅した折には、自分の母親の手作り料理を口に運ぶたびに「うまっ!」を連発する。もちろん「旨い」という賛辞…

いずれアヤメかカキツバタ

(第277号、通巻297号) 「アヤメ」とくれば、「いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)」《注1》という成句が思い浮かぶ。アヤメは前号で取り上げた時に百科事典などで少々調べたので、ある程度は分かる。カキツバタ《注2》についてはよく知らなかった…

「六日の菖蒲、十日の菊」

(第276号、通巻296号) 30代の始めのころ、転勤後3カ月も経ってから暑中見舞いを兼ねて友人や知人、先輩にハガキで簡単な挨拶状を出したことがある。この種の挨拶状に返信をいただくことはあまりないが、そのときは、親しい先輩の1人からすぐに返信があっ…

「時を分かたず」は辞書を「分かつ」

(第275号、通巻295号) 国の特別天然記念物「トキ」のひなが生まれたというニュースから「時」を連想し、数年前に「時」の慣用句をテーマに書いたブログを思い出した。文化庁の「国語に関する世論調査」が「時を分かたず」の意味を尋ねたアンケートに対し、…

言葉を逆さに見る「逆引き辞典」

(第274号、通巻294号) 辞書マニアを自称する私の部屋の書棚には、何十冊かの辞書、辞典・事典があるが、長い間ほとんど開いたことのない種類の辞書が奥に押し込められたままになっている。その名は「逆引き辞典」。 辞書の見出しは、国語辞典なら、頭から…

百科事典の検索機能

(第273号、通巻293号) 単行本を読んだ後になって、文中のあることを確かめようとすると、事前に付箋でも貼っておかない限り該当個所がなかなか見つけられない。目次はあるが、巻末に索引を備えていない本が多いからだ。 その点、百科事典は違う。前号で『…

書籍版は廃刊「ブリタニカ百科」

(第272号、通巻292号) 春4月。入学式、新学期あるいは社会人へのスタートに合わせて、この時期に辞典を買う人が多い。たいていは、国語辞典か漢和辞典、英和辞典の類(たぐい)だろうが、中には奮発して百科事典を求める家庭も、かつては少なくなかった。…

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは言うが……

(第271号、通巻291号) 万葉集に1番多く登場する花はハギ。140首余りあるという。次いで118首のウメ。意外なことにサクラは、ウメの3分の1しか詠われていない《注1》。しかし、現代日本でダントツに人気があるのはサクラだろう。 桜と梅。二つの樹木の…

風光る月

(第270号、通巻290号) 山形県A町の小さな小学校のN校長から定期的にブログ通信《注》が送られてくる。先日届いた最新号は卒業式での校長あいさつ特集だった。タイトルに「風光る3月に旅立つ君へ」とあった。当ブログの前号と前々号は卒業式の定番の歌に…

『蛍の光』の「かたみ」は「形見」か

(第269号、通巻289号) 悲恋映画の傑作の一つ「哀愁」《注1》。主人公役のロバート・テイラーとヴィヴィアン・リーの2人が初めてのデートでダンスをした時の曲は、映画の中では「別れのワルツ」といった。ロウソクが1本、また1本と消されて暗くなってい…

「今こそ別れめ」は「別れ目」ではない!

(第268号、通巻288号) 弥生3月は旅立ちの季節。私の小中学生時代は、卒業式のたびに「蛍の光」と「仰げば尊し」《注1》を歌った、いや歌わせられたものだった。今や、卒業式の音楽も多様化し、昔ながらの「定番」を歌うのは珍しくなったというが、先日の…

「足も、足下も、すくわれないでね。」

(第267号、通巻287号) 一知半解の身で、辞書の語釈の当否を軽々に断じるものではない。前週の第266号に対する愛読者の方々のコメントや感想を読んで、そう思った。今週号の標題は、読者のコメントの一つに紹介されていた『三省堂国語辞典』の編集委員・飯…

「足をすくわれる」は「足元をすくわれる」に変化の過程?

(第266号、通巻286号) 言葉はいつの間にか変わっていく。意味も、語彙も、用法も、さらには文法も。これからしばらくは、言葉の用法を中心にエピソード風につづっていきたい。 最近、ある本を読んでいたら「足元をすくわれる」という表現に出合った。すき…

「ご返事」か「お返事」か“相乗り語”余話

(第265号、通巻285号) 前号からの続きの今回をもって再録シリーズの最後としたい。「お誕生」「ご誕生」のように、「お」も「ご」も使える単語はそう多いわけではないが、少しずつ増えつつあるように見える。前回のブログの末尾でも紹介した、このような「…

Re:「ご返事」か「お返事」か

(第264号、通巻284号) “再録シリーズ”第4弾は、前回取り上げたEメールの“Re:”の続き、Eメールの返信に対する礼状の書き出しの言葉についてがテーマだ。「早速のご返信」か「早々にお返事をいただき……」とすべきか。「ご」か「お」か迷うことがないだろ…

Eメールの“Re:”の本当の意味は?

(第263号、通巻283号) “人気ブログ”の再録シリーズ第3弾は、北海道弁から一気に外国語の世界へ。と言っても難しい話題ではなく、日常よく使うEメールでの定型語がテーマだ。 Eメールを受け取った後、発信者に返事を出そうとパソコンのメールソフトの「…

続 ・北海道弁 「ビール、まかれちゃった」とは

(第262号、通巻282号) 北海道弁を扱った当ブログ「言語郎」の再録第2弾をお届けする。方言といえば、ふつう話題になるのは、語彙の問題。それに加えて共通語とのイントネーションやアクセントの違いだが、今回は視点を変え、北海道弁の文法的な側面に焦点…

クラス会で聞くのが楽しみ 北海道弁

(第261号、通巻281号) 正月の年賀状を整理していたら「今年の夏は釧路で会おう」とか「クラス会をお忘れなく」とかいった文面の賀状が何枚かあった。私の出た高校のクラス会は、オリンピックの年の8月に開かれることになっているのだ。懐かしの北海道弁を…

「絆」の由来 

(第260号、通巻280号) この数年、新聞、雑誌やテレビ番組などで「絆」という文字をよく見かけるようになっていたが、昨年の東日本大震災「3.11」をきっけに絆の登場が劇的に増え、毎日のように耳にし目にする。 たいていの場合、人と人の結び付きとか縁の…

「元旦」の夜はあり得ない

(第259号、通巻279号) 年賀状の賀詞、本文の末尾には、平成24年元日か平成24年元旦、と添えるのが普通だ。元日と元旦。ほとんどの人はその違いを意識せず、単に1月1日の伝統的な言い換えのつもりで書いているに違いない。実際上はそれで差しつかえない。し…