2011-01-01から1年間の記事一覧

国語辞典の編者は「ご存知」か「ご存じ」か

(第228号、通巻248号) 国語学者の水谷静夫氏と言えば、斯界ではコンピューターを活用した言語処理の研究で名高いが、一般には『岩波国語辞典』の編者として知られる。その水谷氏の近著『曲がり角の日本語』(岩波新書)は、知見に富んだ魅力的な日本語論で…

続「大地震」は「おお地震」か「だい地震」か

(第227号、通巻247号) 例外のない規則はない、と言われるが、接頭語「大」の読み方についての規則は、例外があまりに多い。前号で述べたように、「大」の後に漢語(音読みの語)が続く場合は「だい」、和語(訓読みの語)に続く時は「おお」という規則だ。…

「大地震」は「おお地震」か「だい地震」か

(第226号、通巻246号) 東日本大震災から11日で2カ月。未だに肉親が見つからない人もいれば、原発の放射能による“透明汚染”で自宅を追われている人たちもいる。惨禍をもたらしたあの大地震。NHKなど各放送局は“3.11”に限らず「大地震」を「おお地震」…

「ざっくり」の意味をざっくり説明 

(第225号、通巻245号) 1週間ほど前に『齋藤孝のざっくり!西洋思想』(祥伝社)という題名の本が発売された。齋藤孝氏と言えば、私が最初に読んだ著書は『声に出して読みたい日本語』だが、間口が幅広いのには驚く。文章術から古典の解説、教育論まで様々…

「模る」はどう読むか

(第224号、通巻244号) 前号で紹介したピーター フランクル氏の『美しくて面白い日本語』(宝島社)の続きである。語学の天才、フランクル氏がテレビのクイズ番組で立ち往生した漢字の読みは、「具に」(つぶさに)の他に3文字あった。「予て」「挙って」…

「具に」をなんと読むか

(第223号、通巻243号) 長野県に栄村という人口2300人余の小さな村がある。19日夜のテレビ朝日「報道ステーション」で「震度6が頻発する、もう一つの被災地」として取り上げられた。東日本大震災の翌日・3月12日に震度6強、マグニチュード6.7の強い地震…

「ただちに健康に影響は……」の「ただちに」の期間は? 

(第222号、通巻242号) 東日本大震災から1カ月が過ぎたが、復興が緒に就いたとはとても言えない。ふつうなら新聞の一面に載るような規模の大きな余震も続いており、心が安まる暇もまない。加えて福島第1原発の放射能汚染問題。しかし、基準値をはるかに超え…

被曝と被爆

(第221号、通巻241号) 筑波研究学園都市が出来て間もないころ、学園都市内の研究所などの施設を見学する機会があった。その一つ、建設省(当時)の土木研究所で「曝露(ばくろ)試験」なるものが行われていた。ペンキや建築材料が陽光や風雨にさらされた場…

「当面の間」という表現もあるのか

(第220号、通巻240号) 東日本大震災は、津波による惨禍に加え、原発からの放射線漏出問題もあって様々な地域の暮らしにも大きな影響を及ぼしている。スポーツ大会の延期やイベントの中止も相次いでいる。桜の開花の報を聞く時季だが、とても花見を楽しむと…

凶暴化した「水」の恐ろしさ

(第219号、通巻239号) 「地球は青かった」といったのは、ちょうど半世紀前、人類として初めて大気圏外から地球を見たソ連のガガーリン少佐(当時)だった。青いのは海、すなわち水の色である。水は地球上に生命を作った母である。誕生後も生命は水なくして…

「3.11」大地震

(第218号、通巻238号) 10年前、アメリカで起きた同時多発テロ「9.11」は空からの攻撃だった。今回の東日本大地震「3.11」は海底からだ。共に、未曾有の出来事である。3.11は、しかも大地を揺さぶって大きな亀裂を至る所に作っただけでなく、想像を絶する大…

再録――「エン麦」は馬のエサか人間の主食か

(第217号、通巻237号) 先週号にならって今回も過去のブログのリバイバル版をお届けする。 講談社学術文庫に『英語の冒険』(メルヴィン・ブラッグ著、三川基好訳)という辞書マニアには格好の本がある。英語の「誕生」から「世界の共通号語」にまで発展し…

再録――「とどのつまり」完璧な辞書はない

(第216号、通巻236号) 当ブログは毎週1回、水曜日の未明に更新しているが、このところ公私とも多忙を極め、気ぜわしい日が続いたせいか、曜日を1日勘違いして水曜未明に更新するのを忘れてしまった。そこで緊急避難として過去のブログの中で比較的評判の…

「方便」の本来の意味

(第215号、通巻235号) 民主党・菅内閣の支持率の下落に伴い、政局が二転三転を続けている今となっては旧聞の観もないではないが、民主党政権の凋落を加速させた要因には幹部の不用意な発言、失言がいくつもある。その一つが鳩山前首相の「抑止力は方便」発…

「受胎告知」と“Let it be” 

(第214号、通巻234号) 世界遺産の数が一番多い国はイタリアである。景観も、歴史的な建造物も、芸術作品も、とにかく多い。 「花の都」・フィレンツェは、市全体が歴史地区として世界遺産に指定されている。街それ自体が「屋根のない博物館」とも称される…

八百長相撲は明治の昔から

(第213号、通巻233号) 八百長で大揺れの大相撲。存亡の危機にあるといっても過言ではない。日本相撲協会の放駒理事長は2日の記者会見で「思っても見なかったこと。過去には一切なかったことであり、新たな問題であると認識している」と、力士の携帯電話の…

郷に入っては郷に従え

(第212号、通巻232号) 「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」。往年のベストセラー、イザヤ・ベンダサンなるユダヤ人が書いたという触れ込みの『日本人とユダヤ人』(山本書店)《注1》で世に広まったもっとも有名な一節だろう。先月、…

ベニスとヴェネツィア

(第211号、通巻231号) 「ギョーテとは俺のことかとゲーテ言い」。外国の人名や地名などの固有名詞の表記の多様ぶり、乱れを皮肉った戯れ歌だ。そのゲーテの作品に有名な『イタリア紀行』がある。先週のブログを休載したのは、実は私がイタリアに観光旅行に…

出処進退と出所進退

(第210号、通巻230号) 政治家のスキャンダルや失言が問題になるたびに、決まって登場する言葉に「出処進退」がある。この4日、菅直人首相は年頭の記者会見で「今年は『政治とカネ』の問題にケジメをつける年にしたい」とした上で、小沢一郎氏が強制起訴さ…

「戻り年賀」

(第209号、通巻229号) 脂がのった「戻り鰹(がつお)」の旬は秋だ。では「戻り年賀」は?言葉自体初めて目にする人がほとんどだろうが、しいて季語に入れるとしたら「新年」のということになろうか。戻り年賀とは、『日本国語大辞典』第2版(小学館)によ…