「新年明けましておめでとう」再考

(第310号、通巻330号)
   
    3年前の正月の「言語郎」に、年賀状の「新年明けましておめでとうございます」という文面について違和感を覚える、と書いた《注》。「明ける」自体に「年が改まる→新年になる」の意があるので、「新年」を主語の位置におくと、重複表現になるのではないか。だから、「新年」の2文字は不要。どうしても、新年を強調したいのであれば、「新年」と「明けまして」との間に半文字分空けた方がよい、との思いを長い間抱いていたからだ。

    もう一つ別の見方をすると、「明ける」には「梅雨が明ける」、「休み明け」あるいは「夜明け」のように「〜が終わる」という意味もある。屁理屈をこねると「明けましておめでとう」というなら「(旧年が明けて、or古い年が終わって)おめでとう」とも解釈できる。いきなり「旧年」と来ては年賀状の気分が出ないが、理屈としては成り立つ。

    今年の正月に我が家に届いた年賀ハガキには「新年明けましておめでとうございます」の文面は今のところ1通もない。と書いた直後にメールチェックしてみたら1通だけ「新年あけまして……」とひらがな書きしたものがあった。元日付の新聞の年賀広告でも1件見かけた。この二つ以外には目にしていない。「明けまして……」との書き出しか、「謹賀新年」「迎春」とかいった決まり切った賀詞がほとんどだった。
    
    たかが賀状、されど賀状。定型の挨拶文ではあっても言葉のあり方としては“結果主語”など文法的な興味深い問題を含んでいるようなので、次回に少し詳しく論じてみたい。

《注》 2010年1月6日号「『新年明けましておめでとう』は誤用か」