カラスの「七つの子」は7歳か7羽か、それとも……

(第251号、通巻271号)
 
    これまで3回続けた童謡「赤とんぼ」の次は「カラス」。ブログに対するご意見、コメントの中に「童謡の世界には動物を擬人化した歌詞も多い」と指摘して「七つの子」を挙げ、「ところで七つの子とは、7歳の子なのか7羽の子なのか…」という問いかけがあった。改めて問われると答えに窮するが、実はこの問題、昔から論じられてきたテーマのようだ。

          烏(からす) なぜ啼(な)くの 烏は山に
          可愛七つの子があるからよ
   
          可愛 可愛と烏は啼くの
          可愛 可愛と烏は啼くんだよ

          山の古巣に 行って見てご覧
          丸い眼をした いい子だよ

    ごくふつうの会話で「七つの子」と言えば、7歳の子ども、と受け取るのが常識だ。「三つの子」を例にすると、「の」を抜いて「三つ子」という言い方なら「3人」だが、「の」を入れて「三つの子」と表現すれば、それは言うまでもなく「3歳児」を意味する。この歌の場合は、「7歳のカラスの子」となる。
     
    しかし、『日本大百科全書』(小学館)によれば、カラスは孵化(ふか)から巣立ちまでに5〜6週間を要し、巣立ち後の雛(ひな)は数週間にわたって親鳥と生活をともにして養育される。つまり、幼鳥の期間は長く見積もっても生後3カ月足らず。7歳にもなれば、とてももう子どもとは言えない。「7歳のカラスの子」はありえないわけだ。

    では、「7羽の子」が正しいのか。生物学的には、そうとは言い切れない。上記の百科事典には、カラスは通常4〜5個しか産卵しない、とある。7個も産むことはまずあり得ないという。例外的に「子だくさん親ガラス」がいたとしても、せいぜい1〜2羽を育て上げるのがやっと、とされているので、「7羽の子ガラス」の存在は現実的でない。

    確かに私自身の体験でもそうだった。勤め先のビルの外に街路樹のイチョウ並木が続く。3階にある仕事部屋の窓とほぼ同じ高さの、目と鼻の先のイチョウの枝にカラスが巣を作ったことがあった。時折、覗いては抱卵から巣立ちまでの過程を観察したが、5個の卵から育ったのは2羽だけだった。

    「7歳の子」か「7羽の子」か。どちらの説とも一般に流布している解釈だが、上述のように共に決め手に欠く。実は、意外な異説が2、3ある。次回に紹介しよう。