「寛解」とはどんな意味?難解な医療用語の数々

(第97号、通巻117号)
    病気のデパート、を自称している私は毎朝、薬を6種類飲んでいる。毎食後にも2種類服用している。何回かに分けて薬を飲むことを「分服」というのだそうだ(三省堂新明解国語辞典』)。これは、先頃発表された「難解な医療用語の言い換え案」の中の「頓服」(とんぷく)の意味を確かめようと、辞書にあたって知ったばかりの言葉だ。国民的な国語辞典『広辞苑』(岩波書店)に「分服でなく、その時1回に服用すること。また、その薬剤」とあったからである。「分服」(ぶんぷく)の反対語が「頓服」というわけである。
    しかし、「頓服」とはどういう意味か、『広辞苑』の説明だけでは分かりにくい。私自身は実は、包装紙にくるんだ飲み薬の昔風の言い方ぐらいに漠然と思っていたのだが、『現代例解国語辞典』(小学館)の語釈を読んで得心がいった。「定期的にではなく、症状が現れた時だけ服用する薬」。つまり、解熱剤とか痛み止めの薬いうのであろう。
    難解な医療用語の言い換えを検討中の独立行政法人国立国語研究所」が、現場でよく使われているのに誤解されがちな言葉として挙げたのは57の用語。そのうちで私がまったく分からなかったのは「寛解」(かんかい)という言葉である。これまで見たことも聞いたこともなかった。同研究所の解説によれば、「症状が落ち着いて安定した状態」の意味だそうだ。
    一般的によく使われる言葉であっても、医療用語としては特別な意味で用いられるケースもある。その一つが「ショック」だ。ふつう、ショックというと、急な刺激を受けたり、強い驚きを受けたりした時に使われることが多いが、医療の世界では「血圧が下がり、生命の危険がある状態」を指す。
    「予後」も誤解を招きやすい。難解医療用語の改善の動き広がる、というニュースを報じた新聞自体が「『予後6カ月』は『余命半年』」の意」と、まぎらわしい書き方をしているほどなのだから。「予後」とは「今後の病状についての医学的な見通し」のことであって、「余命」と必ずしもイコールではない。「予後は悪く、平均余命は6カ月」とでも言うべきである。
    国立国語研究所の「言い換えるべき難解な医療用語」候補の中には「腫瘍マーカー」、「浸潤」、「重篤」、「セカンドオピニオン」、「膠原病」などもある。人によって当然、理解の程度に差はあるにしても、医療の世界で使われる言葉は概して難しすぎる。しかも、国語辞典の語釈とは微妙に違うこともあるから、単なる言い換えだけでは済むものではない。医者にとっては自明なことであっても、患者の理解度に合わせ、かんで含めるように説明してほしいものだ。