今度の新顔は「文頭の“ハ”」

(第78号、通巻98号)
    「文頭ナノデ」に違和感を覚えるかおぼえるかどうか。前回取り上げたテーマについて「第二の職場」で雑談していたら、はるか年下の女性職員が「今の若い人たちの間では、ナノデどころか“……は”と、いきなり“は”で始める言い方さえある」と教えてくれた。「文頭ハ」とでも名付けようか。「は」は‘ha’ではなく‘wa’と発音する助詞のことだ。
    どんな使い方をするのか。電話で「もしもし、Aさんはいらっしゃいますか?」とかけてきた相手に「……は、きょう休んでいます」と答えるのだという。「……」の部分は、なにも言わない。つまり、すべてを省略して「は」で話し始める、というのである。
    主語にあたる「Aさん」だけを省いたとも言えるし、あるいは「Aさんは」以下の相手の発言全体を受けた一種の接続詞的語法とみることもできる。例えば、相手の話を引き取って「ということも確かにあるね」とか「とは言ってもねー」とかいう言い方と似ていなくもないからだ。
    しかし、この「文頭ハ」は今のところ辞書には載っていないようだ。私自身も情報入手したばかりで手元に資料があるわけではない。直接、耳にしたこともないが、前回の「文頭ナノデ」に関連があるので取り急ぎ紹介した。もっと詳しいデータが集まれば、次の機会に取り上げてみたい。